パート2:分野別優先課題 パンデミック下での「行動の10年」
重点となる政策提言 (重点政策)
市民社会を含めた真のマルチ・ステークホルダー・プロセス実現
SDGsは「SDGs推進円卓会議」の設置をはじめ、原則として市民社会を含めたマルチ・ステークホルダー・プロセスで進められていますが、科学技術イノベーション、経済成長、地方創生、国際協力といった領域では、NGO/NPOや市民社会の参画が十分ではなく、企業など他のセクターに比べて軽視される傾向があります。「SDGs推進円卓会議」の積極活用、地方創生、国際協力を含むSDGs各分野の前進に向けて、市民社会を大胆に位置づけてください。地域課題の解決やイシューごとの課題の解決にも「円卓会議」の手法をより活用することを検討ください。
日本・世界での税制の公正化と国際連帯税の導入
SDGs達成には巨額の資金が必要であり、各国がODAを国際合意である「GNI比の0.7%」まで上げても追いつきません。途上国自身の資金や民間投資の多くは経済開発に向けられ、保健などの社会課題への支出が立ち遅れています。航空券連帯税や金融取引税などの国際連帯税により、国際的に公的資金をねん出し、社会課題に投資することが極めて重要です。とりわけ、パンデミックが発生している今日、その実現がかつてなく求められています。一方、世界の富の配分は逆進性が高まり、貧困・格差が加速しています。貧困や格差の少ない社会を目指すには、国際通貨基金も言うように、所得税や法人税の累進化を強め税と社会保障による所得再分配機能を上げる必要があります。また、大手IT企業等が日本はじめ各消費地で莫大な利益を上げながら法人税を払っていないという問題がありましたが、昨年10月約140カ国がデジタル課税等の新しい国際ルールに合意し2023年より実施の運びとなりました。ところが、米国等で法整備が難航し24年以降の実施へとずれ込んでいます。税の公平化と富の再分配を強化するという立場から新ルールの早期実施を求めます。
①[若者の政策決定への参画促進]
②[若者の政策決定への参画及び活動推進のための財政的援助]
①若者の意見をあらゆる意思決定機関に伝えるため、誰一人取り残さずに幅広いユースの意見を取り入れる姿勢と「SDGsの実施枠組みに関する議論」(パートナーシップ会議、円卓会議、推進本部との意見交換会)等の意見交流の場を保障してください。地方自治体レベルでより一層の若者の参画推進を促進するため意見交流と参画の場の保障が重要です。オンライン・オフラインの双方を適切に活用してください。
②若者の意見を吸い上げるだけではなく、政府及び地方自治体により若者の活動の実現と継続のための資金的支援が求められています。
多様な政策提言 (個別政策)
SDGsの進捗に関するフォローアップ、効果測定方法の開発と開示
SDGsアクションプランに掲げられている政策がどのように実施されているかの進捗を、SDGs推進本部会議及びSDGs推進円卓会議にて、半年に一度、報告してください。進捗が見られない政策についてはその原因を特定し、対応策の協議が必要です。
不正資金流出の防止に向けた制度構築や取り組みの強化
これまで金融活動作業部会(FATF)を中心に、犯罪組織による資金洗浄及びテロ組織への資金移動への対策強化が図られてきました。2021年8月、FATFは第4次対日審査報告書を公表し、対策の一層の向上のため金融機関等に対する監督やマネロン・テロ資金供与に係る捜査・訴追等に優先的に取り組むべきとしています。今後、IT技術の進歩等により対策のさらなる強化が必要となると考えられ、日本政府としても適切な対応を遅滞なく実施する必要があります。
ESD・環境教育の推進
実施指針にあるように、学校教育だけでなく家庭、職場、地域、学校等のあらゆる場での実施の促進や教材の改善・拡充を行う。「ESDの推進」の文言のみならず、教員の育成や教材の支援、職場や地域、家庭でESDをすすめるための方策についても言及すべきです。
「貧困・格差をなくす」「持続可能な社会・経済・環境の構築」に関する国内指標の策定
日本の貧困・格差、人権、人間の安全保障、持続可能性などについて、SDGsのグローバル指標で適さない点はより適切に現状把握やモニタリングをする指標が必要でありこれらの立案・形成を求めます。
SDGs推進における社会的脆弱層の参画の強化
SDGs推進円卓会議の構成員を社会における実態が反映されるようにすべきです。女性・LGBT、子ども、障害者、外国人など、様々な脆弱な立場に置かれた当事者が含まれるように、構成員の人数を拡大すべきです。
SDGsの育成に資する人材育成の強化
「SDGs達成のための人材育成」について、ユネスコ関連のみならず、アクションプランの「⑧実施推進の体制と手段」にも追加し、学校教育だけでなくより広い市民社会との連携・協力を明示する必要があります。
NPO/NGOとの連携の拡大
NPO/NGOと政府との連携はSDGs関連政策の策定・モニタリングと実施の両面において重視されることを明記すべきです。NPO/NGOはSDGs達成のための重要なパートナーと位置付け、既存の「NGO活動環境整備支援事業」予算やNPO関連予算を拡大させ、組織強化を図るべきです。
社会的脆弱層のエンパワーメントや状況改善のためのプロジェクトの日本NGOによる実施
外務省「日本NGO連携無償資金協力」とJICA「草の根技術協力」をNGOが積極的に活用して社会的に脆弱な人々への支援を強化できるよう、申請方法を簡略化させたり連携推進委員会やNGO-JICA協議会での議論を活性化させることが求められます。
地方自治体のジェンダー平等に関する施策の実施及び評価
地方自治体におけるジェンダー平等政策、地方の企業における女性活躍推進法に基づく実施計画の策定を推進してください。当事者を中心とした様々なステークホルダーによる施策の評価や提案を行い、地域の政策におけるジェンダー主流化の実現が重要です。
ODAのGNI比0.7%拠出のための工程表の策定
地球規模での開発協力を進め、国の間での格差を縮小させ人間の安全保障を実現するために、工業先進国の一つとしての責務を果たすべきです。
NGOの国際協力の地位を上げるため、担当部署の再編
SDGs推進にあたってNGOと政府の連携を促進するため、NGO・外務省定期協議会とは別枠で、NGO担当大使とNGOの意見交換会を年2回程度、開催してください。
開発協力における、格差・不平等を克服する税制構築支援・税務執行支援・社会保障等制度支援
UHC支援の教訓を踏まえ、より総合的な税制・社会保障の制度構築支援を重点化し、COVID-19への対応を含む開発に向けた途上国の国内資金動員を促進してください。
『SDGs推進基本法』の制定とSDGsの実施を専門的に扱う省庁の設立
『SDGs推進基本法』の制定について議論を進めてください。外交施策から独立して国際協力を実施するために、SDGs実施を専門的に扱う省庁の設立につき議論を進めてください。
紛争下や災害時におけるジェンダーに基づく暴力の撤廃及び平和構築・復興のステークホルダーとして女性参加の推進
安保理決議1325号に基づく国内行動計画(NAP)を着実に実施するとともに、モニタリング作業部会や評価委員会の意見を誠実に次期計画に反映してください。仙台防災枠組に掲げられた合意(政策・計画・基準のデザイン及び実施への若者と女性のリーダーシップなど)の履行が求められます。
政府の優先課題に対応する、市民社会の優先課題
① みんなの人権が尊重され、貧困・格差のない、誰一人取り残さない社会
年齢、障害、先住性、国籍・民族、雇用形態など
大切にしたい視点
② ジェンダー平等が実現された社会
ジェンダー、性的指向・性自認など
大切にしたい視点
③ すべての世代のすべての人の健康と福祉の実現
高齢化、経済状況、障害、国籍・民族、情報、保健医療アクセス、社会的・環境的要因など
大切にしたい視点
④ 持続可能な経済・社会・地域の実現
少子高齢化、第1次産業、バリアフリー・ユニバーサルアクセス、零細・中小企業、科学技術の倫理・法・社会的側面など
大切にしたい視点
⑤ 災害の防止と被害の軽減、生活に必要なインフラの確保
災害に対する脆弱性、人権、スフィア基準など
大切にしたい視点
⑥ 省エネ強化、再生可能エネルギーへの転換・気候変動への取組・循環型社会の実現
気候変動、脱炭素社会、エネルギー転換など
大切にしたい視点
⑦ 生物多様性・森林・海洋等の環境の保全
将来世代、国内や途上国の脆弱層 / 貧困層など
大切にしたい視点
⑧ 平和・参加型民主主義、透明性と責任・司法アクセス
グッド・ガバナンス、参加型意思決定、市民意識の醸成など
大切にしたい視点
⑨ あらゆる人・セクターのパートナーシップによるSDGs達成
市民社会、「もっとも遠くにある人を第一に」など
大切にしたい視点