パート2:分野別優先課題 パンデミック下での「行動の10年」
重点となる政策提言 (重点政策)
生物多様性の損失要因への対処と回復の推進
土地利用改変や資源の過剰利用などの生物多様性損失要因の解決に必要な社会変容を起こすため、省庁を横断したアプローチと、政府・企業・NGO・ユースなどあらゆる立場の人々が参画するプラットフォームの構築により、生物多様性・自然資本を行政及び民間セクターで主流化してください。
Eco-DRRに関する手法の促進
森林や湿地、海岸林といった里地・里山・里海など「自然生態系」の恵みを活用したインフラ(生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR))は、環境や生物多様性を保全しつつ、防災・減災等の機能を発揮することができる社会資本整備の手法です。日本の豊かな生態系を生かして、費用対効果が高く、地域の経済的・社会的な価値も高めることができる生態系を活用した防災・減災の手法を促進していくことが重要です。
SATOYAMAイニシアティブの国内外での推進
農林水産業が行われる「生産景観」は、食料生産、生物多様性・自然資本保全、生計向上を同時に達成する可能性を持ちます。日本の伝統的な土地利用からインスピレーションを得たSATOYAMAイニシアティブのランドスケープアプローチを推進し、国内及び世界各地での自然保護と開発の両立が求められています。
「生物多様性国家戦略2012-2020」の遂行と愛知ターゲットの達成に向けた行動の加速化
世界的には全面的に未達成に終わった愛知目標に代わる次期目標である「ポスト2020世界生物多様性枠組」を2030年ナイチャーポジティブに見合う野心レベルで合意し、行政・民間セクター・市民それぞれを効果的に動かす必要施策を早急に実行することが重要です。
多様な政策提言 (個別政策)
遺伝子操作生物に対する予防原則に基づく規制の適用
生物種の遺伝子の構成を人為的、不可逆的に改変する遺伝子ドライブに対する規制を適用し、ゲノム編集技術を用いた遺伝子操作生物にカルタヘナ議定書の国内法であるカルタヘナ法(正式名称「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」)を適用し、適切な手続きと情報公開の対象としてください。
有機農業を含む生態系に配慮した持続可能な農業の推進と支援規模の拡大
農業において栽培作物及び地域に飛散、浸透する化学物質を減らすため、自然の力を回復させることによる持続可能な農業とそうした農業を基盤としたコミュニティの生物多様性の確保の支援拡大及び奨励措置の拡充を求めます。「国連家族農業の10年」を支持し、持続可能な農業と食料のシステムを確立してください。
遺伝子汚染の実態把握と防止策の実施
港湾におけるこぼれ落ち遺伝子組み換えナタネの自生を含め、全国レベルで遺伝子汚染の実態を地域の人々とともに調査して結果を報告し根本的な防止策を講じることが必要です。
海洋ごみ・プラスチック対策
プラスチック製品の減量化に早急に取り組み、海洋汚染、化学物質汚染を減少させることが必要です。
フェアウッド導入のための法制化
違法伐採はその国の汚職や人権侵害に繋がっているケースが多くあります。日本はこれら木材の輸入に関してより厳しい規制をつくるべきです。「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」が2017年5月に施行されましたが「規制法」でなく「促進法」の枠組みとなったため、国内市場への違法伐採木材の流入を防ぐ効果は不十分です。
主要作物種子法廃止に関して国内の種子を守るための政策実現
種子は生物多様性の根幹をなすものですが2018年4月に種子法が廃止されました。これにより、各地域が推奨する(米を中心とする)種子を維持していくための予算が減らされており、安く種子を生産・販売できる大企業による特定種子の独占的販売が懸念です。
自然資源活用における「責任ある調達」
林産物・海産物等の自然資源の活用について、責任ある調達方針の策定を推奨してください。
環境影響税の導入
環境影響に応じた税財政措置(環境に悪影響をもたらすものには課税、環境保護・再生に貢献するものは減税・補助金などで奨励)を導入・強化することによって自然資本への影響を価格に反映させるなど、環境負荷が少ないビジネスの創出を支援してください。
SATOYAMAイニシアティブの推進
2010年からの実績を評価して国際パートナーシップ(IPSI)の活動を拡大することで、環境保全と開発が両立するモデルを世界各地に広げることが重要です。
政府の優先課題に対応する、市民社会の優先課題
① みんなの人権が尊重され、貧困・格差のない、誰一人取り残さない社会
年齢、障害、先住性、国籍・民族、雇用形態など
大切にしたい視点
② ジェンダー平等が実現された社会
ジェンダー、性的指向・性自認など
大切にしたい視点
③ すべての世代のすべての人の健康と福祉の実現
高齢化、経済状況、障害、国籍・民族、情報、保健医療アクセス、社会的・環境的要因など
大切にしたい視点
④ 持続可能な経済・社会・地域の実現
少子高齢化、第1次産業、バリアフリー・ユニバーサルアクセス、零細・中小企業、科学技術の倫理・法・社会的側面など
大切にしたい視点
⑤ 災害の防止と被害の軽減、生活に必要なインフラの確保
災害に対する脆弱性、人権、スフィア基準など
大切にしたい視点
⑥ 省エネ強化、再生可能エネルギーへの転換・気候変動への取組・循環型社会の実現
気候変動、脱炭素社会、エネルギー転換など
大切にしたい視点
⑦ 生物多様性・森林・海洋等の環境の保全
将来世代、国内や途上国の脆弱層 / 貧困層など
大切にしたい視点
⑧ 平和・参加型民主主義、透明性と責任・司法アクセス
グッド・ガバナンス、参加型意思決定、市民意識の醸成など
大切にしたい視点
⑨ あらゆる人・セクターのパートナーシップによるSDGs達成
市民社会、「もっとも遠くにある人を第一に」など
大切にしたい視点