パート2:分野別優先課題 パンデミック下での「行動の10年」
重点となる政策提言 (重点政策)
意思決定への市民社会参画の促進、透明性と公開性の強化
SDGsは意思決定における透明性・アカウンタビリティと関係者の参画の保障をターゲットの一つとしています。日本においても、政策決定は官僚機構と立法府のみにゆだねるのでなく、早い段階から市民社会や関係する当事者等の参画を得て行われる必要があります。また、マルチ・ステークホルダー・プロセスに基づく意思決定や、意思決定におけるジェンダー平等の達成なども位置付ける必要があります。情報公開の透明性や市民社会の参画の確保について、法律に基づく、より迅速で積極的な展開により、国家の意思決定を国民・市民に開いていくことが求められます。特に、障害者・若者など社会の多様なステークホルダーが意思決定に参加できるような施策が必要です。
国際協力での民主化・透明性・公開性・市民参画の支援
近年、各国で政府の権威主義化が進行し市民社会の活動スペースが政治的・経済的・社会的に圧迫される状況が生じています。また、野党や一般市民への弾圧や迫害、大統領の任期延長などによる複数政党制民主主義の形骸化や、民主的に実施された選挙結果の無効化、不正選挙などが相次いでいます。日本は開発援助等において、必ずしも被援助国の民主主義や人権状況などを重視してこなかった傾向があります。2021年6月のG7コーンウォール・サミットでの首脳宣言にある通り、日本は国際協力の面で「民主主義、自由、平等、法の支配及び人権の尊重」を進め、透明性、公開性、市民社会参画、ジェンダー平等といった点について、客観的な指標等に基づいて自らの援助戦略に積極的に位置づけ、自国の援助が被援助国における人権抑圧や独裁傾向の助長、環境や社会の破壊、戦争等に結びつかないようにする必要があります。また、被援助国に対して、国際人権規約や国際人道法などの順守、民主主義をベースとした法の支配を当該国に求めると共に、脆弱な立場に置かれた人々への影響を最小限にとどめる、的を絞った適切な制裁措置の検討が求められます。
学校保護宣言に対する日本政府の支持発信
ウクライナやシリア、イエメン、ミャンマーをはじめとする紛争地域では、学校が攻撃され子どもたちが犠牲となっています。また、学校の軍事利用により、学校が安全な場所ではなくなっています。「学校保護宣言」とは、武力紛争下でも学校や大学は軍事目的で使用されるべきではないことを明示した国際的な指針です。同宣言は国際的に広く支持され、2022年6月現在、国連加盟国の半数以上となる114カ国、G7の中では日本と米国を除くすべての国が、「学校保護宣言」への支持を表明しています。支持を表明した各国では、国内の法整備・法改正をはじめ、兵士の意識向上、実際のオペレーションに即した訓練など具体的な取り組みが進んでいます。日本政府には、「学校保護宣言」への支持表明に向けた国内関係機関との調整が求められます。
紛争下にある子ども・若者、特に女の子の教育支援の強化
世界で学校に通えない子ども・若者(6~17歳)は約2億5,800万人(6人に1人)に上ります。長期化する紛争の影響を受ける子どもたちの状況は特に深刻で、難民の子どもの2.7人に1 人が初等教育にアクセスできていません。紛争下で女の子が学校に通えなくなる可能性は、男の子に比べて2.5倍になります 。また、ジェンダーに基づく暴力、早すぎる結婚といった女の子にとってのリスクが高まります。紛争下にある子どもの保護支援を拡充することに 加え、特に教育支援を優先化することで、これらのリスクを防ぐための強力な防御策となります。G20大阪サミットにて日本政府によるイニシアティブで策定された「G20 持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ」では「すべての女児及び女性に対して包摂的で質の高い教育を推進」及び「緊急下及び暴力的な状況下にある人々に質の高い教育と学習の機会を確保」が下線で強調(仮訳骨子)されていることから、その具体策として、SDGsアクションプラン2020 に記載されている「女子教育支援」に加え、緊急下の教育に特化した「教育を後回しにはできない」(ECW)基金への新たな拠出を明記してください。
子どもに対するあらゆる暴力の撤廃と子どもの保護に着目した国際協力の推進
子どもに対するあらゆる暴力の撤廃に関して「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ」(GPeVAC)パスファインダー国として、以下の取り組みを求めます。
・2021年8月に策定された「子どもに対する暴力撤廃我が国行動計画(NAP)」の包括的な取組みの省庁横断的な実施
・マルチステークホルダープラットフォームによるNAPの定期的モニタリング・評価・見直し
・SDGsグローバル指標に対応する、細分化されたデータ整備、データによる進捗管理、効果測定/評価の実施
・子どもの意味のある参加等を盛り込むことによる自国での取り組み促進
・「児童に対する暴力撤廃基金」への拠出を通じた他国への取り組み支援強化
多様な政策提言 (個別政策)
差別・偏見や法制度の不備により人権が十分に保障されていない人口層の人権確立とエンパワーメント
LGBTをはじめ十分な人権状況を享受できていないコミュニティについて、各国における人権状況改善の状況を把握・普及し、法整備支援、社会的認知の支援などに取り組んでください。当事者組織・NPOとの連携が欠かせません。
日本国内の各種政策における「人間の安全保障」の導入
発展途上国のみではなく国内の政策のベースとして「人間の安全保障」の理念を活用し、その考え方を国内政策にも積極的に導入してください。
難民支援
国際的な水準に合わせ、難民の受け入れ人数を増やしてください。現行で過剰に厳しい難民認定の審査の基準を見直すことが必要です。入管行政における人権侵害をやめ、難民申請者が人間らしい生活を送り、必要な医療を受けられる環境を作ること及び難民申請者の情報を出身国政府に開示しないことを求めます。
刑法改正による性交同意年齢(13歳未満)の引き上げ
ジェンダーに基づく暴力への規制を強化するとともに、少女の性的搾取を許さない法環境の構築が重要です。
他国への武器輸出や他国での平和人材育成に関する政策実施
「平和のための能力構築」の名の下で軍事的な協力が実施されたり、「防衛装備輸出三原則」で武器輸出や武器の国際共同開発に参入している状況を改め、武器の輸出を禁止し多国間の武器開発から撤退することを求めます。
刑法改正による暴行・脅迫要件の緩和
現行の強姦罪における「暴行・脅迫」要件を緩和し、性暴力における加害者の処罰を容易にしてください。
NPOの支援強化
誰一人取り残さないために、あらゆる分野とエリアで活動をするのがNPOです。NPOは組織規模が小さくボランティアを基本とした運営をしていることが多くNPOの運営支援をするNPO支援センターが各地域にあります。個別のNPOを応援するだけではなく、NPOを支援する組織の拡充が引き続き求められます。
開発協力における、健全な民主主義に不可欠な市民社会活動の自由を保障する法・社会制度構築支援の重点化
国・地域レベルのNGOネットワークとの政策対話や財政支援、市民社会とその活動に関する過度な規制の撤廃、現地NGOと日本政府のODA政策に関する対話を促進してください。
開発協力における、健全な民主主義に不可欠な市民社会活動の自由を保障する法・社会制度構築支援の重点化
国・地域レベルのNGOネットワークとの政策対話や財政支援、市民社会とその活動に関する過度な規制の撤廃、現地NGOと日本政府のODA政策に関する対話を促進してください。
国際協力での汚職防止と民主主義構築の支援
より積極的な市民社会の政策立案・決定への参画や市民の政治的権利の保障を含む、民主主義制度の構築支援や選挙の公正性担保の支援の強化が必要です。
平和構築人材育成事業参加への待遇の向上
「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」事業に参加する若者に対して、事業参加中の経済的な待遇を向上させてほしい。今から30年前と比べてみると、大学の授業料は約1.6倍にも高騰していると言われており、大学卒業後に多くの若者が学生ローン返済に追われる中で、このような事業に参加できる若者は比較的裕福な人に限られています。多くの若者にとって経済的な事情で平和構築活動への従事を断念せざるを得ない状況があり、あらゆる人に参加の機会を提供するためにも待遇を向上させることが必要です。
政府の優先課題に対応する、市民社会の優先課題
① みんなの人権が尊重され、貧困・格差のない、誰一人取り残さない社会
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年齢、障害、先住性、国籍・民族、雇用形態など
大切にしたい視点
② ジェンダー平等が実現された社会
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ジェンダー、性的指向・性自認など
大切にしたい視点
③ すべての世代のすべての人の健康と福祉の実現
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高齢化、経済状況、障害、国籍・民族、情報、保健医療アクセス、社会的・環境的要因など
大切にしたい視点
④ 持続可能な経済・社会・地域の実現
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少子高齢化、第1次産業、バリアフリー・ユニバーサルアクセス、零細・中小企業、科学技術の倫理・法・社会的側面など
大切にしたい視点
⑤ 災害の防止と被害の軽減、生活に必要なインフラの確保
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災害に対する脆弱性、人権、スフィア基準など
大切にしたい視点
⑥ 省エネ強化、再生可能エネルギーへの転換・気候変動への取組・循環型社会の実現
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気候変動、脱炭素社会、エネルギー転換など
大切にしたい視点
⑦ 生物多様性・森林・海洋等の環境の保全
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将来世代、国内や途上国の脆弱層 / 貧困層など
大切にしたい視点
⑧ 平和・参加型民主主義、透明性と責任・司法アクセス
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グッド・ガバナンス、参加型意思決定、市民意識の醸成など
大切にしたい視点
⑨ あらゆる人・セクターのパートナーシップによるSDGs達成
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市民社会、「もっとも遠くにある人を第一に」など
大切にしたい視点
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