目標5のターゲット・実施手段と指標
目標5: ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び少女の能力強化を行う
ターゲット
5.1 あらゆる場所における全ての女性及び少女に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
指標
5.1.1 性別に基づく平等と差別撤廃を促進、実施及びモニターするための法律の枠組みが制定されているかどうか
ターゲット
5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、全ての女性及び少女に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
指標
5.2.1 これまでにパートナーを得た15歳以上の女性や少女のうち、過去12か月以内に、現在、または以前の親密なパートナーから身体的、性的、精神的暴力を受けた者の割合(暴力の形態、年齢別)
5.2.2 過去12か月以内に、親密なパートナー以外の人から性的暴力を受けた15歳以上の女性や少女の割合(年齢、発生場所別)
ターゲット
5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
指標
5.3.1 15歳未満、18歳未満で結婚又はパートナーを得た20~24歳の女性の割合
5.3.2 女性性器切除を受けた15歳~49歳の少女や女性の割合(年齢別)
ターゲット
5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
指標
5.4.1 無償の家事・ケア労働に費やす時間の割合(性別、年齢、場所別)
ターゲット
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
指標
5.5.1 (a)国会及び(b)地方議会において女性が占める議席の割合
5.5.2 管理職に占める女性の割合
ターゲット
5.6 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、並びにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。
指標
5.6.1 性的関係、避妊、リプロダクティブ・ヘルスケアについて、自分で意思決定を行うことのできる15歳~49歳の女性の割合
5.6.215歳以上の女性及び男性に対し、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスケア、情報、
実施手段
5.a 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、並びに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
指標
5.a.1 (a)農地への所有権又は保障された権利を有する総農業人口の割合(性別ごと)、(b)農地所有者又は権利者における女性の割合(所有条件別)
5.a.2 土地所有及び/又は管理に関する女性の平等な権利を保障している法的枠組(慣習法を含む)を有する国の割合
実施手段
5.b 女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
指標
5.b.1 携帯電話を所有する個人の割合(性別ごと)
実施手段
5.c ジェンダー平等の促進、並びに全ての女性及び少女のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。
指標
5.c.1 ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントのための公的資金を監視、配分するシステムを有する国の割合
解説 - 執筆:三輪敦子(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター所長/SDGs市民社会ネットワーク共同代表)
■目標の意味
女性、そしてすべての人が、性に基づく偏見、差別、不平等を受けることなく、それぞれの可能性を開花させ、自らの選択に基づいて尊厳ある人生を送ることは、「誰一人取り残さない」持続可能な開発の鍵です。
■目標の4年間の進捗
国連が2019年に発表した『持続可能な開発目標報告2019』に示されているように、「目標5ジェンダー平等」の達成には、世界的に見て多くの課題が残っています。ベルテルスマン財団&SDSNの『持続可能な開発報告書2019』のSDGsダッシュボード2019年版は、SDGsに関するOECD各国の進捗状況を「達成できている(緑)」「課題が残っている(黄色)」「重要な課題が残っている(オレンジ)」「深刻な課題が残っている(赤)」の4段階に分けて示していますが、2019年に初めて、ノルウェーが緑と評価されました。日本は残念ながら赤です。日本の他に赤と評価されたのは、韓国、ラトビア、トルコ、アメリカ合州国の4か国です。
■各ターゲットの進捗
国連の「持続可能な開発目標報告2019」は、目標5のターゲットの進捗状況について以下のように報告しています。
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15歳から49歳の女性と少女の18%は、過去1年間の間に親密なパートナーからの身体的、性的暴力のどちらかあるいは両方を経験した。
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各国の国会議員に占める女性の割合は0%から61.3%と大きな開きがあるが、平均すると24.3%である。2010年の19%から5ポイント、増加したものの、依然として男性が4分の3の議席を占めている。
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女性は、雇用人口の39%を占めるが、管理職に占める割合は27%にとどまっている。
世界中で、「女性に対する暴力」は、年齢や民族にかかわらず、そして社会的経済的地位や教育レベルに関係なく、女性の尊厳を奪い幸福を脅かしています。90か国で実施された調査によると、平均して女性は、男性の約3倍の時間を無償のケアおよび家事労働に費やしていて、これが女性と少女の教育そして雇用の機会に影響を与えています。また、51か国から得られたデータによれば、パートナーがいる15歳から49歳の女性で、パートナーとの性的関係、避妊の実行、生殖に関する保健サービスについて自身で意思決定ができるのは57%にとどまっています。ジェンダー平等政策を実施するための予算措置が確認できる包括的なシステムを導入し、データを公表している国は、まだ少数です。そして、最も不利な状況に置かれているのは、ジェンダーと、国籍、障害、宗教等、他の要因に基づいた差別が交差し、複合的な影響を受ける女性と少女たちだとしています。
■目標達成に向けて今後最も大切なこと
2006年に最初にジェンダーギャップ指数が発表された際、日本は80位(115か国中)でした。2012年に100位以下に陥落し、2019年は121位(153か国中)でした。順位が下がり続ける日本のジェンダーギャップ指数を見て、「良くなっていないかもしれないが、悪くなってもいないのではないか」と感じる人もいるかもしれませんが、世界で起こっている変化が日本では起こっていないことを理解する必要があります。
最重要課題としては、政治分野におけるクオータ制やパリテの導入を通じた意思決定レベルへの男女の平等な
参加の推進があります。他の重要課題には、今なお根強い性別に基づいた固定観念や性別分業意識の払拭、無償のケア労働の公平な分担、女性に大きく偏っている非正規労働の是正、同一労働・同一賃金に代表される雇用の場での基本的原則の徹底等が挙げられます。長時間労働の解消とディーセントワークの実現を通じて、女性、男性、すべての人が仕事と生活を両立させることも重要です。
同時に、世界のジェンダー課題に目を向け、女性の可能性が閉ざされ、場合によっては命が脅かされる状況が存在することに目を開き、世界と日本のジェンダー平等そして女性のエンパワメントをともに考える視点が大切です。女性であるという理由で学校に行けない、10代前半で結婚させられる、女性性器切除を受ける、財産への権利を否定されるといった状況が今なお続いている国と地域が世界には存在します。
ジェンダー平等が分野横断的課題であることも重要です。SDGsの他の16の目標すべてにジェンダー課題が関係しています。「目標10不平等」は言うまでもありませんが、「目標3健康」「目標4教育」「目標6安全な水」「目標12つくる責任・使う責任」はその代表的なものです。すべての目標のジェンダー課題を理解し、その根本にある構造的な問題の変革に向けて、大胆に取り組むことが求められます。UNWomenは、目標5を「開発と進歩の主要な推進役」と表現しています。目標5は、SDGsの扉を開く鍵です。
改定された実施指針では、優先課題に「ジェンダー平等の実現」が新たに加わり、ジェンダーの視点の主流化が明記されました。この方針をしっかり実施していくことが必要です。
United Nations(2019)The Sustainable Development Goals Report2019.
Bertelsmann Stiftung and SDSN(2019)Sustainable Development Report 2019.
*各目標の解説は、2020年3月時点で執筆され、SDGsジャパンで発行した「基本解説そうだったのか。SDGs2020ー「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」から、日本の実施指針までー」に掲載されたものを転載しています。各目標の執筆者の所属、肩書、執筆内容は2020年3月末現在のものとなります。
最新の解説は、2025年9月に発行された「基本解説2025」で見ることができます。基本解説最新版の購入は、SDGsジャパン「資料・Shop」ページをご確認ください。
前文には「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」という理念が掲げられ、すべての国、およびすべてのステークホルダーによるパートナーシップの下、この計画を実行すると宣言されています。世界を持続的かつ強くしなやか(レジリエント)なものに移行されるために、大胆かつ変革的な手段をとることも、前文の中で強調されています。また、2030アジェンダの重要な要素として、「5つのP」、すなわち人間(People)、地球(Planet)、繁栄(Prosperity)、平和(Peace)、パートナーシップ(Partnership)を掲げ、持続可能な開発の三側面である、経済、社会、環境を調和させなければならないと提唱しています。
SDGs各ゴールについて
各ロゴをクリックいただけると、「目標」と「ターゲット」、「指標」の全文およびゴールの解説を読むことができます。
ここに掲載する「目標」と「ターゲット」は、A/70/L.1の外務省による仮訳を、「指標」は第48回国連統計委員会資料(E/CN.3/2017/2)を基に総務省で作成された仮訳(最終更新日2019年8月)をSDGsジャパンが専門的見地から一部修正したものです。
なお、各目標の解説は、2020年3月時点で執筆され、SDGsジャパンで発行した「基本解説そうだったのか。SDGs2020ー「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」から、日本の実施指針までー」に掲載されたものであり、各目標の執筆者の所属、肩書は2020年3月末現在のものとなります。
最新の解説は、2025年9月に発行された「基本解説2025」で見ることができます。基本解説最新版の購入は、SDGsジャパン「資料・Shop」ページをご確認ください。
目標8: 働きがいも経済成長も
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9: 産業と技術革新の基盤をつくろう
強くしなやか(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標15: 陸の豊かさも守ろう
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16: 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17: パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
解説:一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)