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【開催報告】「だれひとりとり残さない~SDGsが達成された世界を実現するために」~考え、言葉にして、歩き出す・WHAT&HOWの第一歩~ イベントレポート


春の気配が感じられる2019年2月27日。聖心女子大学のイベントホールにて、SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)主催のイベント「だれひとりとり残さない~SDGsが達成された世界を実現するために~考え、言葉にして、歩き出す・WHAT&HOWの第一歩~」が開催され、会場にはおよそ130名が参加しました。

はじめに、SDGsジャパン代表理事 黒田かをりから開会の挨拶が行われ、SDGsの現状や当団体のあゆみについて話されました。

第一部では「世界はどこへ向かうのか。社会の隙間に潜む声を拾うには」をテーマに、さまざまな分野で活躍する登壇者を交え、トークセッションが行われました。登壇したのは、認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズ代表理事 横田能洋さん、社会福祉法人大阪ボランティア協会 事務局長 永井美佳さん、四国生物多様性ネットワーク 谷川徹さん。モデレーターは、SDGsジャパン事務局長代行である、新田英理子が務めました。

まだとり残されている存在と先進国の責任転換問題

左から、大阪ボランティア協会 事務局長 永井美佳さん、四国生物多様性ネットワーク 谷川徹さん、茨城NPOセンター・コモンズ代表理事 横田能洋さん、SDGsジャパン事務局長代行 新田英理子

ここでは、SDGsが目指す「だれひとりとり残さない」社会の実現にあたり、日本社会においてとり残されがちな 「依存症の人」「ホームレス」「在住外国人や外国にルーツを持つ人々」の現状や、とり残されがちな人たちとの取り組みを紹介。そういった存在も含めた共存共栄を目指すために、みんなのリスクや不安をどう解消していくか、一人ひとりの取り組み、民間の取り組みに加えて、行政の仕組みや法律の視点も、当事者の視点から考えていく必要があることについて話しました。

続いて、SDGsジャパン業務執行理事 稲場雅紀が、第一部の議論のまとめとSDGsジャパンで昨年末に発表したSDGsボトムアップアクションプランとの関係について話しました。ここで稲場は2012年から15年までのSDGs成立の過程で、気候変動や世界の貧困問題に関する先進国の責任に関する考え方が大きく変わり、「歴史的な責任」への認識が弱まってしまったことに警鐘を鳴らしました。

そのうえで、政府や国際機関などが責任を果たそうとしない時代においては、「だれひとりとり残さない」というSDGsの精神は市民の自治的な取り組みが推進されてこそ実現できるとして、市民がSDGsの実現に自ら積極的に取り組むことの重要性を指摘しました。

SDGsジャパン業務執行理事 稲場雅紀

誰もとり残さない仕組みからできたSDGsジャパンのSDGsバッジ

第二部は「声を届ける 社会との協働〜語りから引き出す。異なるコラボから生まれる発見〜」をテーマにトークセッションが行われました。コーディネーターは、SDGsジャパン業務執行理事 長島美紀が務めます。

今回のイベントでは、SDGsジャパン正会員用のSDGsバッジが初お披露目。このバッジづくりに会員として関わった、NPO法人しんせい事務局長 富永美保さん、山口産業株式会社代表取締役 山口明宏さんから、完成に至るまでの制作ストーリーが語られました。

NPO法人しんせいは、障害者が社会課題解決の担い手になることを目指し活動しています。今回のバッジのデザインも、障害者と一緒に考えられました。

「バランスは悪いかもしれないけれど、それでいいんだ、そういう人たちが伸びやかに生きていける社会になっていくように、ということでデザインしています」と富永さん。

バッジの台で使われている革は、山口産業の「やさしい革」を使用しています。アレルギーの人や環境保全にも配慮し、植物クロムを使って化学薬品を使わずにつくっています。

「たくさんの力がつながってバッジができてよかった」と山口さん。命を無駄にしないという思いから、革はさいたま市の食肉加工場から出たものをなめし革にしています。(詳しくはこちらでもご覧になれます)

アートに関わることを通してSDGsを知る機会に

続いて、「SDGs×ART:アート活動を通じたSDGsを伝えるということ」をテーマに、アーティストである蟹江杏さんと長年蟹江さんの活動を取材している日テレアックスオンの藤重道治さんが登壇しました。

左から、藤重道治さん、蟹江杏さん、SDGsジャパンジャパン業務執行理事 長島美紀

蟹江さんは、全国からアーティストを呼んで子どもにもやさしい塗料を使ったお絵描きイベントを開催しています。また、2011年の東日本大震災直後に「NPO法人3.11こども文庫」を設立、現在も被災地に寄付本を集めた図書館を建てたり、子どもたちと一緒にアート作品をつくる活動も行っています。

「アーティスト自身もとり残されている存在」だと蟹江さん。蟹江さんがつくるイベントはアーティストが社会問題に関わる機会ともなっているようです。そんな蟹江さんを追いかけて番組を製作している藤重さんは「SDGsは、今を知って同じ未来を描くことをシェアしている」と話し、蟹江さんのアートとSDGsの共通点について話しました。

そして第二部のまとめを務めるのは、 SDGsジャパン業務執行理事の星野智子です。「課題の関連性やストーリーがあってこそ人がつながっていきます。思いがあれば繋がり一緒に取り組んでいくことを教えていただきました」と締めくくりました。

発達障害者の子どももとり残さない、インクルーシブ教育から学ぶこと

続いて第三部のセッションは、社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク(NNネット)と共催で行われました。ゲストは、北海道国際交流センター事務局長 池田誠さん、黒田かをり、認定NPO法人AAR[難民を助ける会]堀江良彰さん、ファシリテーターは星野智子が務めます。

ここでは、北海道で行われている外国人との交流事業や、AARのタジキスタン共和国の発達障害児に対応したインクルーシブ教育について話しました。AARはこの活動を通して、障害児41名の教育機会を得ることに成功。コミュニティにおけるだれひとりとり残さない教育について、環境整備、教員教育など、保護者を含む地域住民や関係者との対話を通し、丁寧に進めていくことが大事だということが語られました。

最後に、参加者の皆さんは第一部から三部までの各登壇者を囲んで3つのテーマに別れて大きな円をつくり、それぞれで対話が行われました。ここでは、みなさん話が尽きることなく盛り上がったようす。イベントは無事盛会に終わりました。

今回の話題に登場した人たちが、みなさんの普段接する人の中にいないということは、まだまだとり残されている人たちがたくさんいるということになると思います。

どうやったらこういう人たちも含めた全員が、生き生きと暮らすことができる社会になるのか? 引き続きみなさんと一緒に考えていけたらと思います。

 

執筆:ライター/アースデイ東京事務局 松尾沙織

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