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国連北東アジアSDGsマルチステークホルダー・フォーラム 参加5カ国の市民社会、SDGs推進に向けた参加国の協力拡大を要請


<だいたいこんなこと>

  • 10月15-16日にロシアのウラジオストクで開催された国連北東アジアSDGsマルチステークホルダー・フォーラムに、日本の市民社会5名をはじめ、韓国、モンゴル、ロシア、中国から市民社会関係者が参加。

  • 同地域は、ジェンダー、貧困・格差、気候変動、民主主義・ガバナンスなど、SDGsに関連する多くの問題を抱えている。一方、国同士では対立関係が主で、SDGs達成に向けた協力の機運は強くない。

  • 日本、韓国、モンゴル、中国、ロシアの市民社会は、平和の促進と、SDGs達成のための域内協力を訴え、各セクターの参画の強化を訴える共同声明を発表した。

 

【10月16日ウラジオストク(ロシア)】10月15-16日の二日間、ロシア極東連邦管区ウラジオストクにある極東連邦大学で、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が主催して、「北東アジアSDGsマルチステークホルダー・フォーラム」が開催されました。SDGs推進に向けて北東アジア6カ国の様々なセクターが集まり、協議するこのフォーラムは、今回で3回目となります。日本からは5名の市民社会関係者が参加したほか、政府・外務省から1名、また、地方自治体ということで富山市から2名の方が参加しました。

■「北東アジアSDGsフォーラム」とは

このフォーラムは、毎年7月に国連本部でSDGsの進捗を評価するために開催される「持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム」(HLPF)に向けて、各地域の意見を集めるために前年の8~10月に開催されているもののひとつです。ほかに東南アジア、南アジア、中央アジア、大洋州で開催されています。ここで出た意見は、3月末にタイ・バンコクで開催される「アジア太平洋地域持続可能な開発フォーラム」(APFSD)に集められ、7月のHLPFに送付される形となります。

北東アジア・フォーラムの構成国は日本の他に、韓国、中国、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)、モンゴル、ロシアの計6カ国。この地域は、欧州連合やASEANのような地域レベルの政府間機構がない世界唯一の地域であり、政治、経済、環境のいずれをとっても複雑な問題を抱えています。この6カ国が「SDGs達成に向けた相互協力の推進」に向けて一つのテーブルを囲む「フォーラム」の空間は非常に貴重だと言えます。

■フォーラムの推進役となる市民社会

市民社会は、当初からこのフォーラムに積極的に参加してきました。この地域が抱える外交関係や経済関係の難しさから、政府、経済界の参加が必ずしも十分でない中で、フォーラムに多くの参加者を送り込み、支えてきたのは、研究機関、大学などのアカデミアと市民社会です。韓国の市民社会はこの地域の中では活動が最も活発で、開発、環境、貧困、マイノリティ、平和、ジェンダーなどの課題に取り組む多くのNGOが「韓国SDGsネットワーク」に結集して参加してきました。モンゴルも女性たちの運動を中心に人権、平和、水・衛生、保健、教育といった分野でNGO活動が活発です。中国は、独立した市民社会の活動はかなり厳しい状況にありますが、それだけに、環境、女性、保健などの分野で不屈で優秀な活動家を輩出しています。

日本の市民社会の参画は、SDGsジャパンを取りまとめ役に、過去2年で大きく広がりました。昨年は環境系NGO、ユース、協同組合など5名が参加。今年もユース、環境系NGOを含め5名が参加し、韓国、モンゴル、中国、ロシアのNGOと連携して、フォーラムでの議論をリードしました。

■対立、競合から協力関係へ

北東アジア地域は、SDGs達成に向けて多くの問題を抱えています。日本、韓国を筆頭に殆どの国が少子化や高齢化に直面していますし、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」も、50位前後のモンゴルを除けば低水準の国が並んでいます。環境面でいえば、温室効果ガスの大排出国がそろっており、大気汚染や生物多様性の破壊も深刻です。高所得国・中所得国が多いものの、DPRKは低所得国で、保健などの面でも過酷な状況にあります。一方で、この6カ国の多くが軍事大国で、政府が強大な力を持っており、政策執行の能力はある国が多いものの、逆に人権、民主主義、参加型意思決定等の面で問題を抱えています。

最大の問題は、地域を構成する各国が政治的・経済的に競合関係にあり、SDGs達成に向けた協力・連携の土台が不足していることです。フォーラムも、ともすれば形だけで終わりかねません。そこで、真剣かつ活発な討議の実現に向けて一役買っているのが市民社会です。今回も、第1日目の午前中に行われた「SDGsの進捗評価」に関するセッションでは、各国政府の発表に対して、各国の市民社会から多くの建設的なコメントが寄せられました。また、午後の「セクター間連携による好実践例」のセッションでは、日本から、2016年の「SDGs実施指針」の策定における政府と市民社会の協力や、マルチステークホルダー連携の公式なメカニズムである「SGDs推進円卓会議」の事例を報告しましたが、それ以外に、韓国のSDGs国家目標の設定に向けた協力の事例や、モンゴルでの大気汚染問題への取り組みの事例など、様々な協力の事例が報告されました。

また、会議の二日目には、特に「誰一人取り残さない」というSDGsの原則を踏まえ、障害者の権利に関するセッションが行われ、韓国、中国、モンゴル、ロシアの障害者運動のリーダーたちがSDGsとの関連で自らの歴史や活動などについて発表、討議しました。

 

■SDGs達成に向けて、平和と協力の推進を呼び掛ける市民社会声明

昨年以来、市民社会はこのフォーラムに合わせて、SDGs推進の前提となる平和を呼びかけ、また、各国の協力を呼びかける共同声明を、韓国、モンゴル、日本、中国の市民社会のリーダーシップにより発表してきました。今年の市民社会声明は、昨年の内容をベースに、協力や平和に関する呼びかけをより積極的なものにするということで、日本のユース代表、新武志さん(持続可能な開発のための日本ユースプラットフォーム(JYPS)事務局長)および中国の環境系NGO「自然の友」法・政策アドボカシー専門家のワン・シンイーさんが中心になって起草し、二日目の閉会セッションで披露されました。

声明の内容ですが、北東アジア地域の各国政府およびステークホルダーが同じテーブルを囲んで議論するこのフォーラムの重要性を再確認するとともに、環境の持続性、平和、公正、人権、平等のために、国レベル、また、各セクターによる、より強固な連携と民主主義的なガバナンスの強化を訴えます。さらに、この地域の協力を強化するために、SDGsの進捗を地方、国、地域レベルで開かれた形でレビューするためのmechanismの必要性を訴えます。そのうえで、本フォーラムの主催者である国連アジア太平洋経済社会委員会に対して、以下の5つの要望を行っています。

  • 北東アジア・フォーラムの成果が、アジア地域全体のSDGs進捗評価フォーラムであるAPSFDにしっかりと伝えられ、北東アジアの問題がアジア全体でしっかり共有されるようにする必要がある。

  • ユース、女性、障害者など多くの参加者が充実した生産的な議論をできるように、準備のための市民社会フォーラムを、本フォーラムの一日前に開催できるようにする必要がある。

  • アカデミアや民間セクター等と同様、公式のプログラムの中に、市民社会のSDGs達成のための取り組みに関するセッションを設けるようにする必要がある。

  • HLPFやAPFSDには非国家主体の参画メカニズムが存在するが、それと同様、北東アジア・フォーラムにも同様の参画メカニズムを整備する必要がある。

  • フォーラムの成果を最大限生かすために、フォローアップのための政府間フォーラムを設置する必要がある。

この声明は、SDGs市民社会ネットワークなど、各国別の市民社会ネットワークを含む4カ国15団体の賛同を得て採択されました。今後、アジア太平洋地域の市民社会の中で共有され、来年3月のAPFSDにもフィードバックされることになっています。

声明本文はこちらからダウンロードできます(PDF

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