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[SDGs Blog]東日本大震災からの10年とSDGs

コロナ禍のなかで東日本大震災からまもなく10年を迎えます。


福島県の県外避難者数は2020年12月時点で約3万人。原発事故による見えない恐怖との戦いが今も続いているなか、昨年は新型コロナウイルスという新たな見えない恐怖が重なるように訪れました。


街のかたちが変わり、そこに住む人たちの生活も変わり、それにようやく折り合いをつけながら慣れてきたこの10年間。コロナ禍のなかで2011年3月11日から日常ががらりと変わったあの頃と「新しい日常」といわれるいまのことがどこかオーバーラップします。


震災直後の被災地では、被災体験をした当事者どうしが避難所で、職場で、商店街で励ましあい支えあい、助け合いが生まれました。


コロナ禍では世界中の人がこの災害の当事者となりました。感染拡大を防ぐべく「マスクをし、手洗いをし、外出を控えて、3密を避ける」という日々の中での支えあい方は、直接ではなく間接的なオンラインでのつながりとなり、「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンが本当に支援を必要としている人に届きにくいもどかしさを感じます。


そこで思うことは、東日本大震災の経験や震災から10年の間に経験したことから学んだことは、どのように生かせるのかということです。

2015年3月に仙台で開催された、第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組(Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015-2030)」では、「より良い復興(Build Back Better)」という考えが示され、防災・減災の推進に向けて女性や若者のリーダーシップ、市民社会やアカデミア、企業やメディアといったマルチステークホルダーの参画が重要であることが示されました。


2019年の台風19号の被災地である宮城県丸森町(まるもりまち)では、住民向けの復興・復旧計画だけではなく、SDGsをベースにした子ども版の復興・復旧計画を作成しました。


子どもたちがまちづくりに参加する機会をつくることは、保護者や町役場の職員を巻き込みまさにマルチステークホルダーの参画の実践となっています。


「仙台防災枠組」とSDGsはどちらも2030年が目指すべきゴールです。SDGsの17目標 のなかでも、気候変動による世界的な自然災害や格差・不平等が新型コロナウイルスによ りより深刻な社会的、経済的な課題となってきました。また、日本社会の課題である少子 高齢化やジェンダー問題も先送りにできない状況になっています。


そんななかで、「仙台防災枠組」が採択された場所である仙台では、女性の防災士が数多 く誕生しています。震災直後の避難所でも女性目線で洗濯干し場や着替えの場所、授乳ス ペースといった配慮ある取り組みが実現しました。これにより、コロナ禍での避難所運営 の見直しが始まっています。また、何度も住み替えが必要だった被災者の新しいコミュニ ティづくりをNPOなどが支援する仕組みも誕生しています。先達からの教えを守ること で命が救われたことで、体験したことを伝承する活動も活発です。


東日本大震災の被災地がこの10年で経験し学んだことを生かし、東北の豊かな自然環境や歴史を踏まえて、2030年のゴールに向けて文字通りマルチステークホルダーでアクションを起こしていくことが、東北の地で活動している私たちの役割だと思います。


一般社団法人SDGsとうほく代表理事 紅邑晶子




 

このメッセージは日経BPが運営する「未来コトハジメ」で登録をされた方へ2021年2月18日付で配信されたメールマガジンに掲載されたエッセイを加筆修正したものです。

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