日本政府「SDGs実施指針改定版」に対する見解を発表
(1月4日)一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン、共同代表理事:大橋正明、三輪敦子)は、2023年12月19日に日本政府「SDGs推進本部」(本部長:岸田総理大臣)が発表した、SDGs達成に向けた日本の中長期の国家戦略である「SDGs実施指針改定版」への見解を発表しました。
同指針改定版は、4年ぶりとなる改定となります。
ぜひご一読いただくとともに、今後ともSDGsの達成に向けてSDGsジャパンと対話/連携いただけますようお願いいたします。
日本政府「SDGs実施指針改定版」に対する見解
ーいかに危機に瀕しているとしても
SDGs達成への決意と歩みなくして未来はありませんー
環境、経済、社会、そして平和の課題が複合的かつ複雑に作用し、
持続可能な未来を根底から脅かす現状を踏まえ、
SDGsの理念と原則に則って、「誰一人取り残さずに」人権が保障され、
貧困・格差・不平等から解放される「続く未来」の創造を
一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク
2023年12月19日、日本政府「SDGs推進本部」(本部長:岸田総理大臣)は、SDGs達成に向けた日本の中長期の国家戦略である「SDGs実施指針」(以下、実施指針)を4年ぶりに改定しました。一般社団法人SDGs市民社会ネットワークは、政府が率先してリーダーシップをとって変革を加速させる決意が改めて示されたことを歓迎するとともに、政府が牽引するSDGsの取り組みが「誰一人取り残さない」というSDGsの中心理念に則って実施され国内外におけるSDGs達成に大きく寄与することを期待し、以下の見解を発表します。
① パブリック・コメントを通じた実施指針の進展を歓迎
パブリック・コメントを通じ、市民社会の提言が反映されたことを歓迎します。具体的には以下の諸点が挙げられます。
SDGs達成に向けた牽引役として「市民社会」の貢献が明記されたこと
経済・社会システムの変容の過程で取り残される可能性のある人々への対応の必要性が明記されたこと
「ビジネスと人権」に関する行動計画の着実な実施と企業活動における人権尊重の取り組みの促進が明記されたこと
全ての目標において横断的に実現されるべき点として、人権の尊重とジェンダー平等が明記されたこと
「国際社会との連携・協働」に関し、ODAの国際目標であるGNI比0.7%を念頭に置くことが確認されたこと
別紙のステークホルダーに、国連「主要グループとその他のステークホルダー(MGoS)」の構成にも呼応して「ジェンダー」が新たに加わったこと
ステークホルダーとして「議会」が明記されたこと
ステークホルダーの「次世代」が「ユース」に改められたこと
② 実施指針を具体的かつ効果的に実施するための行動計画を
一方で、実施指針にアクションプランについての言及がないことに懸念を表明します。今後、実施指針に記された理念を政府の具体的な行動として実施するためには行動計画や具体的施策が不可欠であり、それらの計画や施策には明確な達成目標と達成期限、そして、SDGsに求められるシナジー創出への視点が欠かせません。これに関して、2018年から毎年発表されてきた「SDGsアクションプラン」を、その構成や内容を改善し、省庁横断的なSDGs達成への取り組みを示す政府全体の年次行動計画として再確認し、適切に作成・実施することを求めます。ODAのGNI比0.7%達成など、実施指針で確認された点を確実に実現するためのロードマップの作成と実施も欠かせません。
③すべての目標において横断的に人権尊重とジェンダー平等を実現するための制度的整備を
「誰一人取り残さない」という理念を踏まえれば、SDGsの核心は「人権」であり、日本が批准している人権条約を始めとする国際人権基準の実現が求められます。その際には、差別と不平等の交差性・複合性の視点を踏まえ、人権の保障に取り組む必要があります。SDGグローバル指標16.a.1「パリ原則に準拠した独立した国内人権機関の設置」を始め、日本が繰り返し国連人権理事会や人権条約委員会から勧告されてきた国際人権基準を実現するためのインフラ整備が強く求められます。OECD諸国平均との比較等において課題が指摘されている目標5「ジェンダー平等の実現」や目標10「人や国の不平等の解消」の実現にも人権の視点が不可欠です。
④ 貧困・格差解消のための指標の確定と目標値の設定を
SDGs推進円卓会議民間構成員が政府に提出した「SDGs実施指針改定に向けた提言」の「人間(People)」分科会からの最重要提言の一つが「日本における貧困および格差解消を測るための指標を確定し、目標値を設定し、それを属性別に検証する」ことでした。これについて、実施指針は特に言及していません。国内における貧困と格差の解消は目標1の達成に向けた喫緊の課題であり、OECDの相対的貧困の定義に則って継続的に分析し対応する必要があります。その際には、SDGグローバル指標が求めているように、性別、年齢別のデータが重要です。
⑤ 一層、幅広いステークホルダーとの対話の機会を通じてSDGsの確実な達成を
SDGsの達成には、国連MGoSに代表される幅広いステークホルダーの参加と協働が不可欠です。今後もより一層、取り残されがちな人の声が政策と施策に反映される必要があります。2022年度に2回にわたって実施された「SDGs実施指針改定に関するパートナーシップ会議」は、幅広いステークホルダーが日本におけるSDGsの達成に向け、目標やターゲットを議論するための重要な場でした。こうした場をさらに発展させ、そうした会議からの提言を政策に反映することが求められます。パブリック・コメントの募集については、市民社会を始めとする幅広いステークホルダーから意見を聴取し政策に反映するという目的に鑑みれば、意見募集の期間およびパブリック・コメント募集に関する広報活動について、さらなる改善を期待します。
環境・経済・社会に統合的にアプローチするSDGs達成の基盤であり前提が平和であることをつくづくと痛感する今、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し」と謳う日本国憲法前文を踏まえ、あらゆる武力紛争の即時停止と平和の実現に、日本政府が一層のイニシャティブを発揮することを改めて強く求めます。
【本見解に関する問合せ先】
一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク
千代田区飯田橋1-7-10 山京ビル本館605
teigen@sdgs-japan.net(担当:新田)
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