政府VNR報告書案のパブコメを提出しました!
- sdgsjapan
- 3月28日
- 読了時間: 5分
日本政府はSDGs進捗度合いの評価について国連に報告する自発的国家レビュー(VNR)の報告書案を発表し、3月19日(水)から4月18日(金)までの間、意見(パブリック・コメント)を募集しています。
SDGs達成を目指す130ほどの団体のネットワークであるSDGsジャパンも意見を提出しました。市民社会からの意見をぜひご覧ください。
みなさまもぜひパブリック・コメントにご参加ください。
SDGsジャパンは2月末に市民社会目線のSDGs進捗評価・提言として、SDGsスポットライトレポート2025を、そして「どうやってパブリックコメントを出すの?」のお助け、パブコメガイドも先日発出いたしましたので、そちらもぜひ参考になさってください。
日本の国内でのSDGs推進について世界にどう伝えるのか、あなたの意見を表明するチャンスです!
持続可能な開発目標(SDGs)に関する自発的国家レビュー(VNR)報告書案
に関する意見提出
一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク
2016年に発足したSDGs に高い関心を持つ市民社会組織(CSOs)を中心とした約130 団体のネットワークの私たち「SDGs 市民社会ネットワーク(略称:SDGs ジャパン)」は、以前の2回のVNR 報告書作成プロセスと比べて、今回は準備が早く始まり、CSOsとは複数回の率直な意見交換がなされ、それらで表明されたCSOsの意向も多くが今回のVNR の報告書案に反映されたことを歓迎します。
そのうえで、今回正式に募集されたVNR 報告書案についてパブリック・コメントを提出しますので、適宜ご検討下さい。
I.貧困と格差の重要性
コメント:日本政府はこの報告で貧困を最重点課題に取り上げ、属性別のデータや制度の状況を明示し、特に厳しい状況に直面している高齢者世帯や母子世代、そして国内外の難民や避難民、貧困層、そして国内外の格差の状況改善に一層努力することを表明して下さい。
理由:本報告書案4.の「(3)5つの重点項目と主な取組」から平成28(2016)年の「SDGs実施指針」の「ビジョンと8つの優先課題」までのSDGsに関する主要政策文書の中で、目標1の貧困が課題や重点とされたことはありません。このことを反映してか、日本政府のSDGsグローバル指標における貧困に関する1.1.1と1.1.2は、一貫して「提供できるデータはありません」となっています。
しかし本報告書案にある目標1(貧困)の(1)平均所得金額にある表を見ると、全世帯の金額が2017年以来ほぼ一貫して対前年減を続け、2013年の金額にも未だに満たない中、高齢者世帯平均が2018年以来全世帯平均より大きく減少し、格差が拡大していることを疑わせています。またこの表には児童のいる世帯の数字はありますが、母子世帯の数字はありません。子ども家庭庁の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」に示された、父子世帯に比べて母子世帯の平均年間収入は僅か61.6%に過ぎないという貧困・格差の問題に、しっかり言及して取り組むべきではないでしょうか。さらに(3)生活保護には、増え続ける申請者数と減り続ける
受給者の数字は示されていますが、生活保護の捕捉率が把握されてないことがその主な背景の一つと強く推察されます。
II. 貧困と格差における国際協力のあり方
コメント:本報告書案の目標1(貧困)と目標10(不平等)における「国際協力」で、様々なプロジェクトやプログラムなどのインプットの記述だけでなく、各国あるいは地域の貧困や格差のアウトプット(改善状況)を示してください。またそうした国際協力のインプットの考え方を、経済成長を土台とした貧困や格差削減だけに依拠せず、SDGsのように環境と社会と経済のバランスの取れたものにすることを目指してください。
理由:本報告書案では、主にJICAによる様々なプロジェクトやプログラムの実施というインプットが述べられているだけで、その結果(アウトカム)の貧困や格差の改善がどうなっているかが説明されていません。またそれらのインプットの殆どが経済成長に結びついており、それが成長が貧困や格差の解消につながるという論理があるのだろうと推定します。しかし日本の近現代もそうであったように、経済だけでは貧困や格差の問題は解決しません。社会政策や自然資源に対する人々の権利確保といった側面も極めて重要です。このような記述では、国民のODAに対する不信感を増幅しかねないかと危惧します。
III. 人権の強調
コメント:本報告書案の中で、SDGsにとって極めて重要な「人権」にさらに多く言及すべきです。
理由:SDGsや持続可能な開発には人権が前提であることは、多くの内外諸機関が強調しています(例えばUNDP、23、“Human rights for sustainable development”, JANIC, 22、「国際協力と人権」など)。本報告書案に人権という単語は48か所ありますが、その執筆者を見ると政府が12か所だけで、JYPSなど民間構成員をはじめとしたステークホールダーには36か所あります。全体に15か所ある「ビジネスと人権」をこれらから除くと、人権への言及は政府が僅か2か所ですが、民間は31か所あります。これと対照的に政府が強調する「人間の安全保障」という単語は、政府執筆箇所に10か所ありますが、民間のところにはありません。つまり政府と民間構成員をはじめとしたステークホールダーの間に、人権や人間の安全保障に関する意識に大きな差があることを見せています。加えて、1993年に国連総会において全会一致で採択されたパリ原則が要請し、SDGs16.a.1の指標でもある国内人権機関も、世界には118機関もあるのに日本にはまだ設置されていません。日本政府が人権に対してSDGsにおいても適正な認識をしていることを示すことが、国際的にも極めて重要です。
(以上)
Comments