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三輪敦子共同代表理事より2025年新年のご挨拶

危機の克服をあきらめず、光を見出し、希望をつなぎ、「続く未来」の創造を


新しい年、どのように迎えられたでしょうか? SDGsの達成年限である2030年まで、後5年を残すのみとなりました。政府は、2017年と2021年に続き、今年、SDGsに関する3回目のVNR(Voluntary National Review、自発的国家レビュー)提出を予定しています。


1)SDGsの前提であり基盤としての平和

2022年6月に開催したSDGsジャパンの会員総会で、「三重苦」という言葉で表現した「気候危機」「パンデミック」「ロシアのウクライナ侵攻」というSDGsを取り巻く困難のうち、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックはいったん収束しましたが、新たな感染症の不安は消えていません。


気候危機の克服については、2024年の国連気候変動枠組条約COP29が会期の2日間延長を余儀なくされるなど、締約国間の合意形成の難しさが浮き彫りになっています。地球温暖化を止めるために必要な、財源の負担に関する合意が困難なことが最大の理由であり、グローバルサウスと呼ばれる国々からは、COP29の合意内容に対し、強い落胆と不満が示されました。


そして、終息の見通しが立たないロシアのウクライナ侵攻に加え、2023年10月以降、パレスチナ西岸ガザ地区での武力紛争が激化の一途をたどっており、武力紛争下であっても遵守されるべき国際人道法に違反する攻撃が頻発しています。これらの2つの紛争が様々な地域の軋轢や対立に影響を及ぼし、世界の不安定化が一気に加速している現状があります。


「環境」「社会」「経済」の3領域の課題への統合的アプローチを謳うSDGsですが、その前提であり基盤が平和であることを痛感しています。


2)多国間主義への信頼の回復という課題

2024年9月に開催された国連「未来サミット(Summit of the Future)」は、SDGsの進捗が滞るなか、多国間主義の再活性化を図り、「信頼と連帯」に基づいてSDGs達成に向けた努力を加速するための試みでした。ですが、ロシアがサミット冒頭で「未来のための協定(Pact for the Future)」採択に反対意見を述べ6カ国が同調するなど、異例の展開をたどったサミットになりました。協定は、かろうじてコンセンサスにより採択されましたが、核兵器廃絶や安保理改革に加え、国際的な資金調達(金融)メカニズム等、SDGs達成を促す多くの革新的行動から成る同協定が順調に実施に移されるかどうかは予断を許しません。


かつてなく多国間主義への信頼が揺らぐなか、2025年1月には第2次トランプ政権が誕生します。既にイタリア、フランス、ドイツを始めとする国々で生まれている、排外的な自国中心主義を掲げる政治家や政党がさらに勢いを増すことが懸念されます。排外主義の背景にある「移民/難民問題」への平和的なアプローチは、誰一人取り残さずに未来を構築するための21世紀の最重要課題の一つです。


気候危機を考えても、一国レベルで解決できる問題ではありません。そうした状況で多国間主義が後退すれば、国際合意は「言葉だけ」の存在になる可能性が高まります。国際合意が顧みられなくなれば、SDGsに代表される地球益、公共益に立った国際目標は機能しなくなるでしょう。戦時における国際人道法を始めとする国際規範も揺らぎます。国際連盟が破綻した歴史にも学び、10年後に、現在の様々な危機が第三次世界大戦の端緒であったと認識されることがないようにする必要があります。


そして、2030年に向けSDGsの前途が明るくないとしても、SDGsの達成をあきらめるという選択肢は私たちにはありません。SDGsをよりどころに、世界と地球の終わりを回避し、「続く未来」をつくりましょう。


2025年春の完成が予定されている日本政府のVNRに関し、SDGsジャパンは、団体内で政策提言活動を担う各分野の事業ユニットの皆さんとともに、市民社会の視点でSDGsの進展を検証する「スポットライトレポート」を作成中です。各事業ユニットによる努力を通じ、幅広い市民の経験を反映したレポートにしたいと思います。VNR策定プロセスでは政府によるパブリックコメントの募集も予定されています。そちらにも、是非、皆さんの声を届けてください。


目を覆うばかりの暴力が蔓延する世界〜そこでは周縁化され脆弱な立場におかれてきた人たち、特に様々な意味でのマイノリティ性を有する人たちが最も影響を受けます〜を、平等で公正で平和で豊かな世界に変革するために、SDGsジャパンに集う皆さんと一緒に知恵を出し共に歩んでいく2025年になりますように。2025年も、どうぞよろしくお願いいたします。


三輪敦子

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク共同代表理事

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