「新型コロナウイルス感染症」対策と人権侵害の問題を問う:CIVICUSモニター「市民の自由とCOVID-19パンデミック」
高度化したデジタル技術やサプライチェーンなどによって世界が国境を越えてつながるなかで、世界的に貧困と格差が拡大し、世界各国の国内でも分断と格差社会化が進んでいます。そうした中で、多くの国々で、より権威主義的な政権が成立し、少数派に対する迫害や、多元主義の後退が生じています。独立した市民社会の存在や活動、表現の自由が脅かされる状況について、市民社会は、「市民社会スペースの狭小化」と呼び、警告を発してきました。
「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)は、「パンデミック」(地球規模感染症)として世界を席巻し、多くの国で強制的な外出制限措置や行動制限に関する勧告的な措置、感染症にかかった人に関する個人情報の確保や追跡、これらの情報の限定的な公開といった措置が取られました。これは、急激な感染症の拡大から人々の命を守り、保健医療体制や社会の崩壊を防ぐうえで、やむを得ない措置ですが、本来、これらの措置は、パンデミックから人々の命と健康を守るうえで必要な最低限の、エビデンスに基づいた、時限的なものとして、透明で説明責任のある民主的な手続きの下で導入されるべきものです。また、法執行の在り方も、過剰な強制力や暴力の行使は認められるべきではありません。しかし、先進国を含め、多くの国で、これらの措置が、透明性や説明責任を果たさない形で恣意的に導入されたり、何らかの政治的な目的を果たすための手段として使われたり、法執行が過剰な暴力や弾圧を伴う形で行われたり、必要な個人情報の保護がなされず、社会的な差別・偏見の対象となったり、不利益を被ったりするという事態が生じています。
独立した市民社会の活動の促進や能力の強化、人権の確立のために取り組む世界的なNGO「CIVICUS」(シビカス、本部:南アフリカ共和国)は、2020年4月、COVID-19にかかわる市民社会に対する抑圧や迫害、過剰な権力行使等の事例を集め、分析したレポート「市民の自由とCOVID-19パンデミック=世界各地における制限と攻撃=」
(英語タイトル:Civic Freedoms and the COVID-19 Pandemic: A Snapshot of Restrictions and Attacks)を発表しました。これは、COVID-19の拡大によって、世界各地でどのような人権侵害が起きているかを記録化したうえ、各国政府に対して、表現の自由の保護、法的手続きの順守、ジャーナリストや人権擁護者への人権侵害への対処、個人データの目的外使用の禁止、過剰な手段での法執行の禁止など、9つの提言を行っています。
この報告書の日本語訳は、ヒューライツ大阪(アジア太平洋人権情報センター)、国際協力NGOセンター(JANIC)、SDGs市民社会ネットワークの3者によって行われました。
*この事業の一部は地球環境基金に助成を受けています
レポート和訳はこちら(PDF)
<出典>
https://monitor.civicus.org/COVID19/ シヴィカス(CIVICUS)
CIVIC FREEDOMS AND THE COVID-19 PANDEMIC: A SNAPSHOT OF RESTRICTIONS AND ATTACKS (英語)
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