SDGs Blog 「大阪都構想を、SDGsの視点から考える」
SDGs Blogは月に1~2度SDGs市民社会ネットワーク会員団体や有識者などによって書かれるSDGsに関連したエッセイです。SDGs市民社会ネットワークが考える「誰一人取り残さない」社会の具体的な姿を考えます。
※掲載内容は筆者の見解であり一般社団法人SDGs市民社会ネットワークの公式見解ではありません。
「二重行政の無駄をなくし、大阪が成長するため」実施された2度目の住民投票は「大阪市廃止に否決」という結果に終わりました。
いわゆる大阪都構想、つまり「大阪市廃止・特別区設置」の住民投票で問われたのは、
①政令指定都市の大阪市を廃止し、4つの特別区という自治体に再編。
②大阪市が実施してきた「広域行政」の権限・財源を大阪府に移管。
③「広域行政」に係る大阪市の税収の約1/3(2000億円)を、大阪府に毎年渡す。
これらに賛成か、反対か、といったものでした。
「広域行政」とは、主に都市計画などの「成長戦略」です。つまり、「知事のリーダーシップで、成長戦略を進めれば大阪が成長する」という賛成派と、「大阪市がなくなるうえに、権限と財源が奪われる。自治体を4つにするスケールデメリットのため、市民サービスが悪化する」という反対派、つまり「IRカジノや大規模インフラ投資による成長戦略を優先するのか」「市民サービスを重視するのか」の対立であったともいえます。
大阪都構想は、大阪市がこれまで広域行政に使っていた2000億円、つまり大阪市の財源の約1/3を毎年、大阪府に渡すことが決まっていました。つまり将来、元大阪市が広域行政を縮小して、社会保障費等に財源調整したくなってもできません。元大阪市が反対したとしても、元大阪市の税収で、カジノなど巨費のビッグプロジェクトを、大阪府は進めることができる仕組みでした。
130人もの学者がさまざまな知見で、都構想にNOを訴えました。指摘されたそれらは、都構想で特別区財政が不安定になる、持続可能な街づくり、災害対応の観点などの問題指摘であり、SDGsとも共通します。また成長戦略とするIRカジノは、SDGsと相反します。
子どもを産み育てる、保健医療といった、市民サービスの第一線を担うのは、基礎自治体です。大阪都構想は基礎自治体である大阪市の、権限と財源の約1/3を失うものでした。これは、地方分権強化の流れにも逆行しており、SDGsがうたう「誰一人取り残さない社会」から遠のくでしょう。
「広報というより広告」と大阪市の特別参与が何度も指摘する大阪市の広報が市民に配られ、維新の会は約4億円の予算を掛けて広報し(我が家は11枚の維新の会チラシが投函!)、都構想成立は既定路線といった空気が大阪に蔓延していました。
そんな中、「大阪市がなくなる!」いても立ってもいられなくなった多くの市民が、自ら街頭に立ち、チラシを作り、ポスティングするようになりました。
「賛成派は維新しか見ないけど、どこに行っても反対派がいる」と言われるほど、市民活動の経験のない市民が参加し、まさに「市民の意思」で大阪都構想は否決されました。
しかし都構想否決直後、吉村知事・松井市長は「広域行政一元化条例」を提案しています。これは上記の都構想のポイント②③の内容です。100億円もの税金を使い、二度否決された住民投票は一体何だったのでしょう。実質的に都構想と同じような条例を出すことは、「究極の民主主義が住民投票」と言っていた知事・市長自身が、民主主義を無視していると言えるのではないでしょうか。
執筆:NPO法人AMネット事務局長 武田かおり
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