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[SDGs Blog]企業家精神のアップデイトが「続く未来」を牽引する

SDGsジャパン共同代表理事の三輪敦子のエッセイを公開しました。


※本エッセイは2月1日に発行されたメールマガジン「未来コトハジメNEWS」の巻頭コラム「ミラコト・サロン」に寄稿された原稿を加筆修正したものです。

 

企業家精神のアップデイトが「続く未来」を牽引する


SDGsの達成期限である2030年まで残り7年を切りました。SDGsの中間年であった昨年9月には、SDGsの進展と残された課題を話し合うために国連SDGサミットがニューヨークで開催されましたが、SDGsの現在地と見通しにとって、明るい材料はあまりありません。


既にあった気候危機に新型コロナウイルス感染症によるパンデミック、そしてウクライナ危機が加わったことで、少しずつ積み上げた進展が帳消しになり、格差の解消、保健サービスや教育の普及、ジェンダー平等を始め、マイナス地点からの立て直しを迫られている目標があります。SDGs採択時点には想定し得なかった状況です。


日本政府は、SDGs達成に向けた政府の最上位政策である「SDGs実施指針」を2023年12月に改定しました。2019年12月に続く2度目の改定になります。SDGsジャパンでは、改定実施指針に幅広い市民の関心や声を反映させるために様々な活動を展開しました。その結果、ステークホルダーに「ジェンダー」が入るなど、「誰一人取り残さない」姿勢と意思が以前より明確になったことについては歓迎したいと思います。


一方で、全体としてSDGs達成に向けた日本の歩みは順調とは言えず、求められる変革が山積しています。日本は、環境NGOの国際的ネットワークであるCAN(Climate Action Network)が気候変動枠組条約の締約国会議(COP)にあわせて発表する「化石賞」を2022年に続き2023年も受賞しました。石炭火力に依存する状況が続いているなど、化石燃料からの脱却、脱炭素が進んでいないことが大きな理由です。SDGsジャパンが繰り返し提言している格差/貧困解消を測るための指標と目標値の設定もおこなわれていません。ジェンダー平等は日本の喫緊の課題です。


なかなか変革が進まない日本ですが、その背景には何があるのでしょう。SDGs達成に向けた政府の責任は重大ですが、政府にまかせることなく変革を起こそうという精神も大切な役割を果たすのかもしれません。


そんなことを考えるきっかけになったのは、先日、訪れた神戸のカワサキワールドという博物館です。カワサキワールドは、明治時代に神戸で生まれた川崎重工グループの企業博物館ですが、創業者たちが、日本の発展の基礎をつくろうと、学校や病院を設立したことがわかります。その背景にあったのは、企業は社会に奉仕し社会とともに発展するべきという使命感や情熱であったようです。何より感銘を受けたのは、政府に先駆け、そして政府に頼ることなく、社会への責任感に基づいて企業が変革を実践したことです。


脱炭素が実現した循環型社会に移行しないと日本と世界の未来はなく、そのための変革が世界各地で進んでいることはビジネスの世界に身を置く方には既に当たり前のこととして理解されていると思います。政府を待つことなく、政府に先駆けて、変革に踏み出す企業家精神あるいは起業家精神が必要ではないでしょうか。高度経済成長の成功経験が意識のアップデイトを鈍らせているように感じることも多々あります。


こうしたイノベーション志向の企業家精神の価値とあわせ、強調したいのは、ビジネス、私企業を仕事の場とされている方々も、職場を離れれば、「一人の市民」であるということです。市民の目線で地域社会の暮らしに目を向け、社会の幸福、well-beingを共に考えたいと思います。


2030年の達成がいかに危機に瀕しているとしても、SDGsの各目標をあきらめるという選択肢は私たちにはありません。産業革命前に比べて1.48度の気温上昇という史上最高の平均気温を記録した2023年を振り返るまでもなく、今のままでは地球も社会も暮らしも破綻します。「続く未来」を創造するために、企業家精神のアップデイトが必要です。


 

参考:

日本政府「SDGs実施指針改定版」に対するSDGsジャパンの見解

日本政府「SDGs実施指針」改訂版(2023年12月19日)

化石賞に関する報道

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