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[SDGs Blog]災害時における「誰一人取り残さない」支援とは

SDGsジャパンの事業統括ユニットのひとつ、防災・減災ユニットの運営団体である防災・減災日本CSOネットワーク浅井伸行さんに「誰一人取り残さない」災害時の支援の在り方、市民社会のこれまでの取り組みについて寄稿いただきました。


防災・減災ユニットは、「防災・減災日本CSOネットワーク」、通称JCC-DRRが担っています。JCC-DRRには現在、NPOや企業など56団体が参加しています。


その淵源は、2015年に開催された国連防災世界会議です。この会議を経て「仙台防災枠組」が採択されました。同枠組は、SDGsを含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」やパリ協定と並んで、国際社会における同年の三大成果の1つとも言われます。その後各国で、これに則っての防災施策の整備が進んでいます。


同会議では、市民社会の提案の一部が実現しました。例えば、災害時により大きな被害を受ける「女性」や「障がい者」への配慮は、それ以前の防災政策や国際枠組などにおいても考慮されてはいました。ただしそれはあくまで、配慮されるべき「脆弱者」カテゴリーの一部という扱いでした。しかし、防災政策の構築プロセスなどに女性や障がい者が参加できなければ、良質な防災政策の実現はありえません。そうした訴えがなされた結果、災害に関わる全プロセスにおける積極的な関与や、エンパワーメント対象としての記載などが実現しました。


こうした取り組みを推進していた団体は当時、ネットワーク団体をつくり活動を推進。国連会議と並行して「市民防災世界会議」の開催を支援するなどしました。


国連会議終了後、当時のネットワーク団体を発展解消させる形で、また東日本大震災以降現場で復興支援に尽力してきた団体なども加わって、JCC-DRRが結成されました。仙台防災枠組の普及や実施状況の監視、および日本の経験の世界への発信などを目的としています。

日本の経験の主要なものの1つに、福島での原発事故があります。そこで浮かび上がった課題や教訓は、あげればきりがありません。ただその中でも、事前の避難計画策定やリスクの周知の重要性は、原発を導入しているすべての国において共通するものですが、それは十分に認識されていないと感じられる状況でした。私たちはそうした教訓を普及させるためにパンフレット『福島 10の教訓~原発災害から人びとを守るために~』を作成。それを12言語に翻訳もして、発信に努めました(現在この業務は他団体に移管)。


また東日本大震災以降も震災や豪雨災害などが相次いでおり、その一部については市民の目線からの分析を実施してきました。


さて、日本は国際的には「防災大国」と見なされており、政府は「国土強靱化」政策を推進。ビジネス界も積極的で、防災関連の商品なども多く誕生しています。さらに、学術研究も進んでいます。私ども市民社会としても、積極的な情報収集の必要を感じる日々です。しかしそれでもまだ、課題が存在します。


例えば近年、ICTを使った各種サービスやSNSの発達で、情報の収集や流布の面で大きな変革が見られます。ただ一方で、日本は高齢化が進んでいるだけに、ネットが使えない人が今なお数千万人単位で存在しています。


また大災害時の避難所の運営については近年、行政のみならず、医療機関やNPO団体、さらには企業も含め多様なセクター間の協力が進むようになっています。しかしそもそも、体育館などに所狭しと布団が敷き詰められるような光景や、学校施設を使用すること自体、国際的には常識でもなんでもありません。より良い避難生活や、被災中の子どもたちの学びの場の保障に向けては、さらなる改善の余地があります。


私どもJCC-DRRおよびそこに所属する諸団体は、たとえ災害時にあってもSDGsが掲げる「誰も取り残さない」が実現されるよう、多様な視点から問題を提起し続ける使命があると感じています。


防災・減災ユニット

防災・減災日本CSOネットワーク(JCC-DRR)

浅井 伸行


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