国連「2024年持続可能な開発目標報告書」が公表
国連の「2024年持続可能な開発目標報告書」の衝撃
2016年以来毎年、国連が公表してきたSDGsの進捗状況に関する「持続可能な開発目標報告書」の2024年度版 (以下、「SDGsレポート2024」)」が、6月28日に公表された。以下は、その内容の簡潔な紹介である。
細かな点で異なる箇所はいくつかあるが、6月25日付でSDGsジャパンのHPでも紹介したSDSNの「持続可能な開発報告書2024」と同様、この報告書はこのままではSDGsが達成できない、という強い国連の危機感を強調している。市民社会組織であるSDGsジャパンとしても、その危機感を共有し、日本政府に対し、危機感を踏まえ多国間主義に立つ国連を有効かつ強力に支援することを求めていきたいと考える次第である。
17%のターゲットだけという衝撃的事実
「SDGsレポート2024」は、グテーレス国連事務総長による以下の衝撃的事実から始まっている。
この「SDGs報告書2024」は、悲痛な内容を含んでいる。それによると、SDGsのターゲットのうち予定通りに進んでいるのはわずか17%だけであり、半数近くがごくわずか、あるいは緩慢な進捗にとどまっている。また残りの3分の1以上のターゲットの進捗は、停滞しているか後退している。
「SDGsレポート2024」は、最新のデータと推計に基づき、世界がSDGsの達成に向けて大きく前進する上で直面している重大な課題について詳述している。挫折を余儀なくされている分野を取り上げる一方、例えば世界的な子どもの死亡率の削減、HIV感染の予防、エネルギーやブロードバンドインターネットへのアクセスなど、具体的な進展が見られる分野も紹介している。
また、特に気候変動、平和と安全保障、国家内および国家間の不平等など、SDGsの進捗を妨げる重要な分野において、行動を加速させるべき点を強調している。「SDGsレポート2024」では、目標達成期限である2030年まであと6年しかない現在、SDGsの進捗状況は、達成にはほど遠く、現在の世界的危機から脱却し、より強靭で豊かな世界の実現のための設計図であるSDGsの達成のために、大規模な投資と規模を拡大した行動が不可欠である。
緊急の優先課題
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの長引く影響、エスカレートする紛争、地政学的緊張、地球沸騰化時代の到来は、SDGsの進展を大きく妨げている。「SDGsレポート2024」は、貧困を終わらせ、私たちのこの地球を守り、誰一人取り残さないという2030年の約束を確実にするために、より強力で効果的な行動をとるために必要な緊急の優先課題と分野について詳述している。
緊急の優先課題とは、以下の三つである。
開発のための資金調達:開発途上国へのSDG投資の不足額は、今や年間4兆ドルに達している。開発途上国は一層の財源と財政的余裕を必要としている。持続可能な開発の促進に必要な資金を動員する上で、国際金融アーキテクチャの刷新が極めて重要である。
平和と安全:強制的に故郷を追われた人々の数は、2024年5月までにおよそ1億2,000万人という、かつてない水準にまで達している。民間人の死傷者は、暴力が拡大する中で2022年から2023年の間に72%急上昇し、平和が緊急に必要であることを浮き彫りにしている。現在も続いている紛争を対話と外交を通じて解決することが不可欠である。
実行の急拡大:食料、エネルギー、社会的保護、デジタル接続性などの重要な移行を推進するためには、大規模な投資と効果的なパートナーシップが必要である。
国連未来サミット、開発資金国際会議、社会開発サミットの重要性
「SDGsレポート2024」は、2024年9月22日から23日にかけて、ニューヨークの国連本部で開催される「未来サミット」が、世界をSDGs達成に向けた軌道に戻す上で、極めて重要であると、強調している。未来サミットでは、あまりに多くの開発途上国を現状に引き留めている債務危機への対処や、国際金融アーキテクチャを刷新する喫緊の必要性などについて、協議が行われる。
さらに、2025年6~7月にスペインで開催予定の「第 4 回開発資金国際会議(FfD4)」と、同年に開催が予定される「第2回世界社会開発サミット」は、共にSDGs達成の機運を高める上で極めて重要な機会であると、「SDGsレポート2024」は指摘している。李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は、「言葉で語る時期は過ぎました。政治宣言を直ちに行動につなげなければなりません。私たちは今すぐ、大胆に行動しなければならないのです」と強調している。
(参考:国連情報センターhttps://www.unic.or.jp/news_press/info/50468/)
この報告書がSDGsジャパンにとって重要な理由
SDGsジャパンでは、団体の事業ユニットメンバーを始めとした会員や有志の皆様と一緒に、本年9月に国連本部で開催される未来サミットで採択が予定される「未来のための協定(Pact for the Future)」の原案について、日本の外務省と2回面談し、未来サミットにも市民社会の立場から傍聴参加を予定している。
現地から、また帰国後も報告の機会を持つ予定です。誰一人取り残さないSDGsの達成を市民社会からも加速するため、引き続き皆様とともに行動できればと考えています。
(以上)
2024年7月2日
大橋正明(SDGs市民社会ネットワーク共同代表理事)
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